ばんどう通信

地球外知的生命体探査 (SETI)

2026年6月3日 発行

著者:國立成功大學 宇野友理

私たちが日々どのような研究を行っているかを紹介します。「宇宙人を真剣に探す方法」があると言ったら、驚かれるでしょうか?この研究分野は、専門用語で「地球外知的生命探索ちきゅうがいちてきせいめいたんさく(Search for Extraterrestrial Intelligence)」と呼ばれ、私たちは通常、英語の頭文字をとってSETI(セティ)と呼んでいます。

もし、他の星に私たちのような文明が存在したら、どうやって彼らを見つけることができるでしょうか?最も有力な方法は「電波」を使うことです。電波は宇宙空間の塵に遮られることなく遠くまで届き、限られたエネルギーで効率よく発信できます。私たちが日々スマートフォンの通信に電波を使っているのと同じように、宇宙の通信手段としても最適な特性を持っているのです。

つまり、もし宇宙人がスマートフォンのような電波発信機を持ち、地球に向けて通信を試みているなら、原理的には私たちがそれを受信できます。とはいえ、実際の探索は一筋縄では行きません。なぜなら、彼らがどのような規格(通信方式や帯域幅など)で電波を送っているか、私たちにはわからないからです。地球のスマートフォンであれば規格が統一されており、主に数百〜数千MHz(メガヘルツ)の周波数帯で通信していますが、宇宙人が同じ規格を使ってくれるほど現実は甘くありません。

現代のSETI研究が始まったのは1960年代です。以来、研究者たちは電波で地球外文明の信号を探してきましたが、現在まで確実な信号は見つかっていません。当初は、宇宙人がどの周波数で信号を送ってくるかを予測する「マジック周波数」の考え方が重視されていました。しかし現在は、電波観測技術の飛躍的な発展により、特定の周波数にこだわらず、観測できる限り広い周波数帯を網羅的に探す方法が主流になっています。

ここで、「人工的な電波と、天体から自然に発生する電波をどうやって区別するか?」と疑問に思われる方もいるでしょう。いくつか方法はありますが、最もシンプルなのは「非常に狭い周波数幅を持つ信号」を探すことです。天体から発生する自然の電波は、物理的な性質上、少なくとも一定の幅(数百Hz以上)を持ちます。それより狭い信号は、人工的に作られたものと考えられるのです。

人工的な信号の例。ヴォイジャー1号
図1. 人工的な信号の例。ヴォイジャー1号(左)は現存する最も遠い人工電波発信源。そこからの電波(右)は、天体では生じない極めて狭い周波数幅を持つ信号の典型例だ。(クレジット:左:NASA/JPL-Caltech(一部改変)、右:GitHub lacker/seticoreのデータより筆者作成)

現在、この「非常に狭い周波数幅の信号」を、世界中の大型電波望遠鏡で網羅的に探す、人類史上最大規模のSETI計画「ブレークスルー・リッスン(Breakthrough Listen)」が進行中です。

その中心的な役割を担っているのが、南アフリカにある電波望遠鏡群「MeerKAT(ミーアキャット)」です。64台のアンテナを組み合わせたこの最先端の望遠鏡で、現在まさに100万個もの星々を対象とした大規模なSETI観測が行われています。将来的には、さらに大規模な「SKA(スクエア・キロメートル・アレイ)」へと発展する予定で、MeerKATでの観測はその最高の予行練習とも言えます。

これら次世代望遠鏡、特にSKAの感度は圧倒的です。地球に最も近い恒星・プロキシマケンタウリまでの距離は4光年——その距離から、私たちが日常的に使っている携帯電話の基地局程度の微弱な電波すら、わずか1時間の観測で捉えられるほどの感度を持っています。これは、人類がこれまで手にしたことのない精度で、宇宙を「聴く」時代が始まったことを意味します。

SKAの完成予想図
図2. SKAの完成予想図。南アフリカ(左)とオーストラリア(右)の2つの大陸にまたがり、それぞれ異なる種類の電波を捉える巨大な望遠鏡群が建設される。(クレジット:SKA天文台)

しかし、望遠鏡の感度が上がるほど、別の問題も生じます。わずか1時間の観測で100万個以上の信号候補が検出されてしまうのです。

その最大の原因は、宇宙人ではなく私たち地球人が放つ人工電波——スマートフォン、Wi-Fi、飛行機のレーダーなど——です。超高感度な望遠鏡は、宇宙からの微弱な電波だけでなく、地球上のあらゆる電波活動も拾ってしまいます。データ上には「宇宙人の電波にそっくりな偽物の信号」が毎時間100万個も混入してくるのです。

現在のSETI研究は、この膨大なノイズの山から本物の信号を探し出す、まさに「藁の中から一本の針を探す」作業です。かつては様々なアルゴリズムを使った手動に近い解析が主流でしたが、近年のAIを活用した機械学習による信号探索が中心になりつつあります。人間が見逃してきた微弱な信号の兆候も検出できるようになり、探索の精度は格段に向上しています。

私は現在、台湾の大学に在籍し、まさにこのMeerKATなどが捉えた膨大な観測データと毎日格闘しながら、信号の解析を続けています。地道な作業の連続ですが、それでも望遠鏡を宇宙に向け、コンピューターの画面にかじりつき続けるのは、単純な理由からです。もしかしたら自分が生きているうちに、人類史上初の「宇宙人からの信号」を見つけられるかもしれない。その可能性が、今日もデータを開く手を動かしています。

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2026年6月3日

國立成功大學

宇野友理

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