(1)なゆたOSETI

鳴沢真也らは、2005年11月から2009年11月に、西はりま天文台の2 mなゆた望遠鏡で光学SETI(OSETI)を行いました。これは日本で最初のOSETI観測です。主にハビタブル惑星が見つかっている13の星をターゲットに、SHG-YAGと呼ばれる緑色レーザーの検出を目的とした分光法OSETIで、観測に用いた波長分解能は約0.6Åでした。観測の詳細は以下にレポートされています。

Shinya Narusawa(2007)Optical SETI observations with the NAYUTA telescope

Shinya Narusawa(2011)Optical SETI observations with the NAYUTA telescope II

なゆたOSETIのロゴマーク

なゆたOSETIのロゴマーク

初観測の瞬間

初観測の瞬間。

(2)2007年SETI研究会

2007年11月3、4日、西はりま天文台でSETIの研究会(ワークショップ)を開催しました。天文、生物、技術、マスコミなど80名の参加者がありました。後にも先にもこれだけの規模のSETIのワークショップが開催されたのはこの時だけです(2026年現在)。「存在と接触の可能性」、「サーチ」、「機器と信号解析」、「ETIと人間」という4つのセッションがありました。全体討論会ではIAA post-detection protocol 第2条「(地球外知的生命の証拠の)発見者は、自身が属する国の、関連する国家機関に通知するものとする」(*)、の「国家機関」はどこが該当するのかという問題で熱く議論が交わされました。これに関して新聞各社も報道しました。

(*)2010年の改訂版ではこの一文は削除されています。

(3)2009年全国同時SETI観測「さざんか計画」

IAA post-detection protocol 第2条によると「(地球外知的生命の証拠の)発見者は、本宣言に賛同している全ての観測者又は研究機関に迅速に通知して、彼らが他の場所での独立した観測によってこの発見の検証ができるように、また、信号あるいは現象に対する継続した観測を行うネットワークが確立されるように務めるものとする」(**)となっています。

そこで、来るXデーに備えた予行演習を行うために、2009年11月11、 12日全国規模のSETI同時観測を行ました。ターゲットはハーバード大学が行ったSETI観測(META計画)で強い電波が検出された4領域のうち、カシオペヤ座の領域でした。全国9箇所の電波観測施設が参加しました。また、ターゲット領域をモニターするために、25の光学天文台(主として公開天文台)が同時撮影を行いました。

この観測には「さざんか計画」という愛称がつきました。観測日決定の後で、11月中旬ごろは、「茶梅梅雨」という雨季があり、光学観測には不利なシーズンであることがわかりました。この自虐的な冗談と、サザンカの花言葉「困難に打ち勝つ」の意味も込めたネーミングです。

「さざんか計画」は、発見時に国内ネットワークを構築するためのケーススタディとなり、2010年ヒューストンで開催されたアストロバイオロジー研究会(ABSciCon2010)でその成果が発表されました。

Narusawa et al. 2010 The Multi-Site and Multi-Frequency Simultaneous SETI Observation in Japan

(**) 2010年の改訂版では以下のようになっています。

「発見者は、この宣言に署名しているか否かによらず他の研究者の協力により、その現象を検出するあらゆる努力をする。かかる尽力には、一つ以上の機関や組織による調査が含まれるが、これに限定されるものではない」

さざんか計画のロゴマーク

さざんか計画のロゴマーク

参加施設

参加施設

(4)2010年 世界合同SETI観測「ドロシー計画」

全国同時SETIが成功したので、翌年は多数の国々でネットワークを構築して予行演習を行う目的でキャンペーン観測を行いました。2010年が近代初SETI観測「オズマ計画」から50周年でしたので、それを記念する意味もありました。オズマ計画は、『オズの魔法使い』に由来する名前でしたので、今回の合同観測は主人公の名前から「ドロシー計画」としました。

2010年11月5日に第1次観測が実施となりました。5大陸にある30ほどの研究機関が参加しました。このような大規模な観測はもちろん世界で初めてのことです。ターゲットはオズマ計画で観測が行われた2つの星と、ハビタブル惑星が見つかっている5つの恒星でした。その後2013年までに5次観測が行われました。

この大規模プロジェクトについては、2012年ジョージア工科大学で行われたアストロバイオロジー研究会と、翌年北京で開催された国際宇宙会議で報告されました(これは、この年のAnnual Rudolph Pesek Lectureに選出されました)。

ドロシー計画のロゴマーク

ドロシー計画のロゴマーク

参加施設

参加施設

(5)世界初の魔法波長の予測

これまで電波観測ではいわゆる魔法周波数(知的生命が恒星間通信、メッセージ送信に使用すると予測される周波数)がいくつも提唱されていました。ところが、OSETIの場合に対応するもの、つまりレーザなどの“魔法波長”の予測はありませんでした。

そこで鳴沢らが世界で始めてそれを予測する論文を発表しました。魔法波長はYAG, SHG-YAGや、恒星の磁場活動を知るために頻繁に観測される波長に適応させたYAGやYLFレーザを特殊な手法で組み合わせた波長です。

Which colors would extraterrestrial civilizations use to transmit signals?: The“magic wavelengths” for optical SETI

Narusawa et al. 2018 New Astron. 60, 61

(6)臼田でのアルタイルSETI観測

2023年8月はアルタイルへ電波を送ったMETIであるCC83(第2回参照)から40周年でした。アルタイル文明から返信が来てもいい時期ですので、40周年の記念も兼ねて2023年8月22日(この年の旧暦の七夕)にJAXA臼田宇宙空間観測所の64 mアンテナを用いてSETI観測が行われました。64 mは第3回で解説したようにMETIでは使用されていますが、国内で行われた電波望遠鏡としても最大のものとなりました。

結果は2024年の日本天文学会で発表となりました。

臼田64 m アンテナを用いたCall to the Cosmos ’83(アルタイル・メッセージ)40 周年記念SETI 観測

鳴沢真也ほか(2025)「臼田 64 m アンテナを用いた Call to the Cosmos ’83(アルタイル・メッセー ジ)50 周年記念 SETI 観測」

アルタイルの観測が行われたJAXAの64 mアンテナ

アルタイルの観測が行われたJAXAの64 mアンテナ