これまで日本で行われてきたSETI(地球外知的生命探査)とMETI(地球外知的生命へのメッセージ)活動について解説します。 主には鳴沢真也著「宇宙人の探し方 地球外知的生命探査の科学とロマン」(幻冬舎)のオリジナル原稿に修正加筆したものです。
日本では、1969年から横尾広光、森本雅樹、寿岳 潤、平林 久、大島泰郎さんらが、サロン的な研究会を非公開で開催していました。 1995年までに40回近く催されたようです。
この研究会から以下のような成果が生まれました。
宇宙から到来する自然界の電波がもっとも弱くなるのは1〜10 GHz周囲のマイクロ波領域なのですが、ゼロになることはありません。 ビッグ・バンに由来する宇宙背景放射(CMB)があるからです。 ところが、暗黒星雲方向では、そこに含まれるホルムアルデヒド H2CO が CMB 電波を吸収するので、CMB が弱くなります。
CMBは3 Kの黒体輻射ですが、暗黒星雲を通過したホルムアルデヒド周波数では1 K黒体輻射に相当した強さになります。 森本さんは、この「逆メーザー現象」がSETIに利用できることに気がつきました。 ホルムアルデヒドのラインはSETIにとってはノイズであるCMBが弱くなり、他の文明からの電波信号がわかりやすくなるというわけです。
地球外天文学者もこれに気がついていて、暗黒星雲の方向、または反対方向に 4830 MHz の電波を送信する可能性があります。 ETI探査をする場合で問題となる、周波数と方向という2つのパラメーターを同時に絞り込めるという画期的なアイディアです。
平林さんと寿岳さんを共同研究者としてまとめた論文は1978年のネイチャー誌に掲載されました (Morimoto, Hirabayashi & Jugaku 1978, Nature, 276, 694)。 現在までにネイチャーに載った日本人唯一のSETIの論文です。
南半球から見えるコール・サックという大きな暗黒星雲方向にある太陽型星などを観測候補リストとしていましたが、 実際には森本さんらは観測をしませんでした。 1986年になってアルゼンチンのイゴール・ミラベルがグリーン・バンクの43 m電波望遠鏡を使い"森本ライン"で 銀河中心に近い暗黒星雲の方向を調査しました。
ウィルスのDNAに地球外知的生命からのメッセージが含まれていないかという調査もされました。 横尾さんと大島さんは、φX174というウィルスの塩基配列を調べました。 これも有名な科学雑誌イカロスに掲載されました(Yokoo & Oshima 1979, Icarus, 38, 140)。
また、中村広司さんは、SV40というウィルスのDNA配列にETIからのメッセージが含まれていないか分析しました (Nakamura 1980 Acta Astronaut., 13, 57)。
寿岳さんと共同研究者らは部分的ダイソン球探査をされました。 まず寿岳さんと西村史朗さんは赤外線データベースの調査を行いました。 続いて実際の観測も行われました。これは主に野口邦男さんによるものです。
相模原にある宇宙科学研究所の1.3 m赤外線望遠鏡で1991年12月15日に67個を観測しています。 この日が、日本における初のSETI観測となりました。 野口さんはさらに北京大学に属する興隆天文台にも行かれて、1.2 m赤外線望遠鏡を使いました。
その後も寿岳さんと西村さんは、赤外線データベースを活用して研究しました。 寿岳さんは、2011年にお亡くなりになりましたが、その後は西村さんが調査を継続されました。