ばんとう通信

SETI(地球外知的生命探査)とGPS(全地球測位システム):
 天敵(人類の出す電波)をどうやって除くか?

2026年8月17日 発行

著者:藤下光身

SETIの天敵(人類の出す電波)との闘い

 この「ばんとう通信」第3号に、宇野友理さんがSETI(地球外知的生命探査)について解説しておられます。詳しくはそちらを見ていただくとして、まとめると、「宇宙人(地球外知的生命・ETI)の発見に有力な方法として彼らが出している電波を観測すること」、「自然に発生する電波とETIの出す人工的な電波を区別する方法として、狭い周波数幅の電波を探すこと」、「人類の出す電波がその観測の邪魔になっていること」が書かれています。なんと最新の電波望遠鏡の1時間の観測で100万個以上の「人類の出す」信号が観測されてしまうそうです。

 そうなんです。SETIの最大の敵は我々の出す電波なのです。これを克服する方法として、私は「多周波・多地点・多方式同時観測」を提案し、手始めに、1999年に当時の名古屋大学太陽地球環境研究所の木曽観測所と、そこから約100km離れた富士観測所の電波望遠鏡を使用した「同一周波・2地点・同一方式同時観測」を行いました(文献1)。これだけ離れていると「人類の出す電波」の多くが片方の電波望遠鏡だけにしか入りません。そこで2か所のデータを比較することにより「人類の出す電波」の多くを除くことができます。しかし、残念ながらこの時は宇宙からと思われる信号は観測できませんでした。なお、これが日本最初の「電波によるSETI観測」でした(文献2)。

 この後、「2周波・2地点・2方式同時観測」として、鳴沢真也さんと共に2005年に光・電波同時観測を行いました。この時、後述するGPS(全地球測位システム)の信号方式の電波の観測もしています(文献3)。更に2009年には世界天文年のイベントの一つとして鳴沢真也さんをトップに「さざんか計画」(鳴沢真也さんが命名しました)を行いました。これは国内の14の電波望遠鏡と27の光学望遠鏡が参加した、世界最初の大規模「多周波・多地点・多方式同時観測」となりました(文献4)。更に、「多周波・多地点・多方式同時観測」を日米間で行いたいと思っていた私は、鳴沢真也さんに提案し、共に国際研究会でアメリカ側(SETI研究所の ジル・ターターさん)に要望を伝えました。2010年はフランク・ドレイクさんが最初の近代SETI(オズマ計画)を実施して50年目にあたり、アメリカ側はこれに積極的に関わって参加国数を増やし、結果、15カ国の25機関が参加する世界的な「多周波・多地点・多方式同時観測」(ドロシー計画)となり、2010年から2013年にかけて鳴沢真也さんを中心として5回行われました(文献5)。なお、5回目は銀河中心にガスが落下して増光現象が起こるかもしれないと言われた現象をターゲットとした観測を想定したETIが、自身の存在を知らせるために出すかもしれない電波を探す「事象駆動(イベントドリブン)SETI」(マジックタイムSETIとも呼ばれています)を私が提案して観測しましたが、残念ながらその現象は起きませんでした(文献6)。なお、「さざんか計画」も「ドロシー計画」も実は単独の観測の寄せ集めで、勿論単独の観測よりは「人類の信号」を除き易いとは言うものの、その観点からは「同一周波・複数地点・同一方式同時観測」の「集合体」であって欲しかったところです。

ところでフランク・ドレイクさんの「オズマ計画」の名称は「オズの魔法使いシリーズ」の第3作「オズのオズマ姫」に寄っています。今回の名称はこれ以上の規模の拡大は考えられないので、「オズの魔法使い」の主人公である「ドロシー」の名前を取って私が命名しました。

SETIの分類: 何を考えてどんな種類の観測をしているのか?

 ちょっと順序が逆になりますが、ここでSETIの分類をしておきます。その前にSETI(地球外知的生命探査)に対応する言葉としてMETI(地球外知的生命への送信:Messaging to ETI)があります。これは、いるかもしれないETIに対し信号(物・電磁波・重力波など)を送ること(直接METI)、あるいは文明から宇宙空間に漏れ出ている信号(間接METI)を指します。そしてSETIはMETIのこの分類に対応して、直接METIの観測を「直接SETI」、間接METIの観測を「間接SETI」と呼んでいます。後述するように、直接SETIか間接SETIかによって観測方法が大きく変わってきます。なおこのMETIとSETIを合わせて、私はCETI(地球外知的生命との交信:Communication with ETI)と呼んでいます。

 オズマ計画は、「ETIが水素原子の出す周波数の電波で自身の存在をアピールしているかもしれない」と考えて、その周波数で信号を探す直接SETIでした。一方で、1999年の私の「同一周波・2地点・同一方式同時観測」は文明からの漏れ電波を観測する間接SETIでした。

そもそもSETIは、観測する側から考えると、どの方向からどの周波数で何時信号が来るかが全く分からず、何らかの理由を付けて、その探査対象を絞って観測を行います。「どの方向から?」:文明のありそうな系外惑星系や多数の星を含む方向を狙います。「どの周波数で?」:直接SETIであれば、文明が理論的に思いつきそうな周波数を、間接SETIであれば、どの周波数も使われているでしょうから特に周波数は気にしません。「何時?」:直接SETIであれば、文明が観測しそうな現象の発生時に合わせて信号を出すことが考えられます(ドロシー計画の第5回がそうでしたね)。間接SETIであれば、何時でも出ていると考えられるので時期は気にしません。という訳で、装置の感度さえ十分ならば、間接SETIの方が確率的にずっと有利と考えられます。宇野友理さんも指摘しておられるように、これからは間接SETIの時代かと思います。

もう1つの考え: GPSタイプの信号

 ここまで述べた観測は、しかし、この「ばんとう通信」第3号に宇野友理さんが書かれているように「自然に発生する電波とETIの出す人工的な電波を区別する方法として、狭い周波数幅の電波を探すこと」を基本としています。でも、我々は別の方式の電波も利用しています。それはGPS(全地球測位システム)で使用されている「スペクトラム拡散方式」と呼ばれる方式です。これはGHz程度の高い周波数でパルス性の信号を送ることにより、周波数の帯域幅を意識的に広げ、どの周波数で見ても信号強度は雑音強度よりも低い状況となっています。従ってどこか特定の周波数に強度のピークがあるわけではないので、スペクトルを見ただけでは信号があるとは認識されません。つまり今までの観測では見逃されている可能性があるということです。この信号は知らされているパルス符号が受信電波の中にあるかどうかを探すことによって認知されます。「同一周波数でパルス符号の異なる多数の信号を送ることができる」とか、「送信電力の割にSN比(信号対雑音比)が稼げる」という特徴があります。この方式の電波のみを探すことによって、「(通常の)人類の出す信号」の多くを取り除くことが可能です。

 この2つの特徴があるため、ETIが「スペクトラム拡散方式」を使っている可能性は有りそうです。特にSN比が稼げるということは同一の送信エネルギーであれば遠方まで届くということとなります。そこで先にも述べたように、2005年の「2周波・2地点・2方式同時観測」の時に、私はこの方式の電波の観測も行いました(文献3)。これも分類としては間接SETIになります。

さて、パルス符号が分からないと信号が検出できないではないかという疑問があります。その通りです。ですが、もう1つの特徴「同一周波数でパルス符号の異なる多数の信号を送ることができる」があるため、可能なすべてのパルス符号が使われているということも考えられます。そうであれば、適当なパルス符号で探せば、その意味はともかく、信号があることだけは分かるはずです。とは言え、中心周波数やパルス周期・パルス長は不明なままなので、結構な数の組み合わせの中から探すことになります。そんな訳で、時間が十分に空いたら解析しようと思いつつ今に至ってしまいました。

こんなの見つけました

A)2018年にエジプト旅行をした際に昼食を取ったアスワンの近くのリゾートの名前がSETIでした。

SETI

SETI

B) 2012年の春にトルコ周遊のツアーへ参加してイスタンブールに行きました。そしたらなんと宿泊したホテルの名称が WOW HOTEL でした。研究会なども開催できる会場を併設したホテルで、トルコ国内に数カ所あるようです。

WOW HOTEL

なお、1977年にアメリカで「未だに原因のはっきりしない72秒間の狭い周波数幅の信号」が観測されており、これをWOW信号と呼んでいます。詳しくはこのホームページの「Wow!信号とは」を見て下さい。

文献

1:藤下光身・他、地球外知的生命の探査を目的としたふたご座β星の電波観測、東海大学紀要産業工学部、2、35-38、2009

2:鳴沢真也、望遠鏡でさがす宇宙人、旬報社、2009、ISBN 978-4-8451-1107-7

3:藤下光身・他、地球外知的生命体の探査を目的としたうみへび座領域の電波・光同時観測、九州東海大学工学部紀要、33、7-11、2006

4:Narusawa, Shin-ya et al., Project SAZANKA: Multisite and Multifrequency Simultaneous SETI Observations in Japan, in Communication with Extraterrestrial Intelligence, Douglas A. Vakoch (ed), SUNY PRESS, 109-124, 2011

5:Narusawa, Shin-ya et al., Project Dorothy: Worldwide Joint (Multisite and Multifrequency) SETI Observations, 2013

6:Fujishita, M. et al, A New Approach to Search for Extra-Terrestrial Intelligence (SETI) Monitoring with the Expected Flare-up of the Galactic Center, ICICIC Express Letters, 8, 4, 1007-1011, 2014

藤下光身の写真

2026年8月17日

東海大学名誉教授 藤下光身

(故フランク・ドレイク氏と:鳴沢真也さん撮影)

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